remcat: 研究資料集

(TANAKA Sigeto)

厚生労働省からの回答

前回記事 のとおり8月8日に厚生労働省あてに毎月勤労統計調査に関する質問を送ったのだが、その回答が10月4日に届いた。全文を記事末尾に示す。

詳細はあらためて記事を書くこととしたいが、簡単に書いておくと、つぎのような感じである。

  • (1) (「資料2」の集計方法はいつから?) についての回答は、「確認中です」というもの。回答に2か月近くかかって、こんな単純なことがわからんの? と思うが。
  • (2)(抽出時と調査時で事業所規模が違う場合のあつかい) と (3) (産業間の移動は層間移動なのか) については、回答の文面が微妙であるが、すくなくとも統計委員会点検検証委員会での説明を否定しているわけではない。
  • (4) (「集計に用いる層」からの移動しかカウントしないのか?) については、明確に「母集団労働者数の補正に計上されるのは、集計に用いる層からの移動に限ります」という回答。「資料2」の説明は書き間違えではなく、 https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20220724/wg5#pop で示した懸念があたっていたことになる。
  • (5) (「再集計」の集計方法) と (6) (「時系列比較のための推計値」の集計方法) については予想通りであり、2012-2018のデータの再集計と2004-2011の「時系列比較のための推計値」とでウエイトのあたえかたが異なるというもの。https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20220102/rev2019 参照。
  • (7) (既公開データの母集団労働者数は検証しない?) と (8) (経済センサスの労働者数が誤ってる可能性は検討しない?) については、いずれも検証/検討しないという回答である。これまでの母集団労働者推計の誤りや経済センサスとのずれについては、ワーキンググループの今後の検討を待っていても、有益な情報は出てこない可能性が高い。

なお、(1) について今後の確認が進んだときには連絡をもらえるか、(2) (3) については統計委員会点検検証委員会の資料・議事録での説明内容が現在の毎月勤労統計調査にも妥当するのか、確認中である。

回答全文

厚生労働省からの回答 (2022年10月4日、電子メールの添付ファイル (Word形式、全8ページ) による) の全文を以下に示す。原文は、各質問ごとに1ページを使い、質問を書いたあとに回答を書く構成になっている。以下では、回答部分を引用の形式にして示す。

なお、こちらから出した質問のメール では、後半に、質問の趣旨や根拠資料についての解説をつけていたのだが、それらは下記の回答にはふくまれていない。



【御質問】
(1) 「資料2」の説明によると、調査対象事業所の労働者数が増減した場合でも、「集計に用いる層」は原則として変更しないことになっています。この方法は、いつから使われているものでしょうか?

【回答】
(1)について、
「集計に用いる層の変更」の変遷については確認中です。


【御質問】
(2) 2019年7月19日におこなわれた統計委員会点検検証部会 (第9回) では、抽出時と調査時で事業所規模がちがった場合には、調査時の規模区分で集計し、その事業所の労働者数を母集団労働者数に反映させることになっています。この方法は、現在も使われているのでしょうか? また、その際の母集団労働者数の推計の方法は、ワーキンググループ第5回の「資料2」のものとおなじでしょうか?

【回答】
(2)について、
統計委員会点検検証部会 (第9回) 資料2P6は、
抽出時と調査時で事業所規模が異なっていた場合の取り扱い及び、
調査途中で事業所規模が変更になった場合の母集団労働者数に反映する旨をお示ししたものです。
母集団労働者数への反映の詳細はワーキンググループの資料のとおりです。


【御質問】
(3) 2019年8月28日におこなわれた統計委員会点検検証部会 (第10回) では、事業所規模だけでなく、産業の移動についても、その分の労働者の増減を母集団労働者数推計に反映させると説明しています。この推計方法は、現在も使われているのでしょうか? また、その場合、「集計に用いる層」は変更するのでしょうか?

【回答】
(3)について、
統計委員会点検検証部会 (第10回) 資料2-1P2では、産業変更があった事業所については、補正率を算定するための増減被保険者数にはカウントしない としており、雇用保険データによる補正には反映されず、母集団労働者数にも反映されません。
集計に用いる層の変更については、ワーキンググループの資料のとおりです。


【御質問】
(4) 「資料2」 p. 5 の説明では、「集計に用いる層」から別の層に移動した事業所の労働者数だけがカウントされ、それ以外の移動がカウント対象にならないように見えます。その理解で正しいでしょうか?

【回答】
(4)について、
ワーキング資料2P5に記載のとおり、母集団労働者数の補正に計上されるのは、集計に用いる層からの移動に限ります。
母集団労働者数の推計方法については、事業所規模の変化がどの程度発生しているか等を検証した上で今後の改善の方向性を検討することとしています。


【御質問】
(5) 2019年1月に公表された再集計(現在「本系列」と呼ばれているものの2012年から2018年分)では、母集団労働者数推計についてどのような方法が使われたのでしょうか?

【回答】
(5)について、
2012年から2018年までの「再集計値」の計算においては、東京都の一部抽出調査分を復元するため集計に抽出率逆数が必要となったことと併せ、現在の方法と同様、母集団労働者数の推計においても集計時点に属する層の抽出率逆数を使用しています。


【御質問】
(6) 2004年から2011年までの調査データについての「時系列比較のための推計値」の計算では、母集団労働者数推計についてどのような方法が使われたのでしょうか?

【回答】
(6)について、
2004年から2011年の「時系列比較のための推計値」は、再集計ができなかった期間について、推計の方法を検討して行ったものです。そのため、一部抽出調査分の必要な復元を行う以外は従来の方法を用いており、母集団労働者数の推計においては、抽出時点の抽出率逆数を用いています。


【御質問】
(7) 「資料2」 p. 9 に、今後の検証内容の案が提示されています。この検証は、すでに公開されているデータ (「本系列」「従来の公表値」および「時系列比較のための推計値」) の母集団労働者数にどのような偏りがあるかをあきらかにするものではないと理解しましたが、その理解で正しいでしょうか?
また、その場合、すでに公開されているデータの偏りについて、別途検討する予定はありますでしょうか?

【回答】
(7)について、
今回の検証は、すでに公開されているデータを検証、検討することが目的ではなく、毎月勤労統計調査の今後の改善の方向性を検討するために行うものです。


【御質問】
(8) 経済センサスの労働者数が誤っている可能性については、検証をおこなうのでしょうか? それとも、経済センサスの値は正しいという前提での検証だけをおこなうのでしょうか?

【回答】
(8)について、
今回の検証は、毎月勤労統計調査の今後の改善の方向性を検討するために、全数調査である経済センサスの結果を用いて行うものであり、経済センサスの労働者数について検証するものではありません。