下記の論文を出版しました。
- 田中重人 (2016)「「妊娠・出産に関する正しい知識」が意味するもの:プロパガンダのための科学?」(特集 一億総活躍の中の男女共同参画:第4次基本計画を読む) 『生活経済政策』230: 13-18.
2015年8月、妊娠・出産に関する「医学的・科学的に正しい知識」をはじめて盛り込んだ保健副教材改訂版が高校に配布されました。その第20節「健やかな妊娠・出産のために」に載っていたのが、女性の妊娠のしやすさは22歳で頂点を迎え、そのあと急激に低下していく、という、加齢による減少を誇張したグラフでした。この論文では、このグラフ改竄事件の経過と、このグラフの元となった研究について、解説と評価を加えます。また、科学的研究への信頼と男女平等 (男女共同参画基本計画) に関して、この事件からえられる教訓を引き出します。
私たちが専門家を信頼できるのは、彼らは相互に厳しい批判を繰り返してダメな研究成果をふるい落としているはずであり、そのような淘汰の過程をくぐり抜けた確実性の高い知識について、誠実に解説してくれるものという前提があるからだ。今回の「妊娠のしやすさ」グラフ改竄事件から得るところがあるとすれば、このような信頼をおくことのできない専門家集団が実在するという事実を明るみに出したことであろう。
(p. 16)
目次:
- 「妊娠のしやすさ」改ざんグラフ問題
- グラフの来歴
- 「医学的・科学的に正しい知識」の危うさ
- 性差に基づく男女共同参画?
論文に関する情報:
- 目次・文献・原稿PDFと追加情報: http://tsigeto.info/16a
- 出版者のページ: http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/
- 大学図書館所蔵: NCID:AA11227193
- 公立図書館にも結構入っていると思います
- ISSN:13429337
この事件と「少子化対策」プロパガンダに関する情報: http://tsigeto.info/misconduct/