remcat: 研究資料集

(TANAKA Sigeto)

2000年度労働時間等総合実態調査

2000年度調査については、『労務事情』『労務管理』『労働基準広報』の3誌に記事が載っている。

まず『労務事情』984号 (2001年4月15日) から:

 標記調査は、中央労働基準審議会 (中基審) における検討用資料として実施されているもので、平成12年度版 (速報) は、昨年10月の中基審で発表された。
 12年度版の調査項目は、(1)週所定労働時間、(2)時間外・休日労働および深夜労働に関する労使協定締結状況、限度基準の適用状況、割増賃金率、(3)賃金台帳の調製、記入状況等々である。
 この種の労働時間に関する大規模調査は、労働省 (現在の厚生労働省) の「賃金労働時間制度等総合実態調査」が一般的であるが、本調査は行政の政策立案・推進のためのデータとして利用することを目的としているため、かなり詳細な調査内容となっている。その分、企業の担当者にとってはズバリ知りたいところが集約されているので利用価値は高いといえよう。以下に全文を紹介する (表は一部抜粋)。
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(2001) 労働省. "[特集資料2] 「1年単位の変形制を導入している」事業場は31.6%: 平成12年度労働時間等総合実態調査結果(速報)" (特集 「新・労働時間管理」マニュアル). 労務事情 984: 22-32. (p. 22)

http://id.tsigeto.info/naid/40003915147

「本調査は行政の政策立案・推進のためのデータとして利用することを目的としている」とあり、単に実態を把握するためのものではなくて政策立案目的であること、具体的には中央労働基準審議会で資料として検討対象になったことがわかる。「中央労働基準審議会 (中基審) における検討用資料として実施されているもので」という表現から、1998年度以前の調査も同様に中央労働基準審議会で利用されてきたことがうかがえる。「全文を紹介する」となっているので、この記事はこの審議会で実際に検討対象となった資料と文章は同一ということであろう。「平成12年度版 (速報)」となっているので、その後に正式の報告書が出た可能性があるが、それは見つからない。

調査の説明はつぎのとおり:

I 調査の概要

1 調査対象
 調査対象は、労働基準法別表第1第1号から第5号まで、第6号のうち林業、第8号から第15号までおよびその他の事業に該当する主として民営事業場のうちから、業種・規模・地域別事業場数を勘案して対象事業場数 (21,079事業場。なお、特例措置対象事業場は全体のうち7,968事業場である) を決定し、具体的な事業場はこれをもとに各都道府県労働局において無作為に選定した。

2 調査方法
 調査は、平成12年5月および6月に全国の労働基準監督署の労働基準監督官が事業場を訪問する方法により実施し、原則として平成12年4月1日時点の実態を調査している。なお、調査結果は母集団に復元したものを表章している。
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(2001) 労働省. "[特集資料2] 「1年単位の変形制を導入している」事業場は31.6%: 平成12年度労働時間等総合実態調査結果(速報)" (特集 「新・労働時間管理」マニュアル). 労務事情 984: 22-32. (p. 22)

http://id.tsigeto.info/naid/40003915147

「II 調査結果の概要」では「週所定労働時間の状況」「時間外・休日労働に関する労使協定」「時間外・休日労働の限度基準の適用状況」「割増賃金率」「賃金台帳」の順に結果が紹介される。これらのうち「時間外・休日労働の限度基準の適用状況」が法定時間外労働の実際の時間を調べた結果であるが、そこに興味深い記述がある。

4 時間外・休日労働の限度基準の適用状況

※「最長の者」とは、調査月における所定外労働時間が最も多かった労働者のことをいい、「平均の者」とは、調査月において最も多くの労働者が属すると思われる所定外労働時間の層に属する男性労働者のことをいう。
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(2001) 労働省. "[特集資料2] 「1年単位の変形制を導入している」事業場は31.6%: 平成12年度労働時間等総合実態調査結果(速報)" (特集 「新・労働時間管理」マニュアル). 労務事情. 984: 22-32. (p. 29)

http://id.tsigeto.info/naid/40003915147

「平均の者」という用語について、「調査月において最も多くの労働者が属すると思われる所定外労働時間の層に属する」労働者とする定義がここではじめて出現する。それだけでなく、ここでは「男性労働者」に限定されている。「最長の者」には性別の限定はないので、「平均の者」だけについて、男性に限定して調査していることになる。そのあとの注釈では「通常の労働者」の定義について、1年単位の変形労働時間制の対象労働者のほか、旧女性保護規定対象者を除く、となっているので、その関係なのかもしれない。さらにそのあとには「なお、平成10年度の数値は、男性労働者について行った調査結果である。」とある (p. 29)。

法定時間外労働については、「1週」「月間」「年間」について、限度基準 (それぞれ15時間、45時間、360時間) を超える割合が、前回 (1998年度) の数値と比較をまじえて、文章で列挙されている。このときの「1週」をどうやって選んだかの説明はない。また「1日」の数値は出てこない。

『先見労務管理』1173号 (2001年3月25日) にも2000年度調査の解説が載っている。上記『労務事情』記事とおなじく、「速報」によるもののようだ。

 週所定労働時間や時間外・休日労働、深夜労働の割増率の状況などの把握を目的に厚生労働省が実施した「平成12年度労働時間等総合実態調査 (速報)」によると、事業場平均の週所定労働時間は38時間38分で、40時間以下である事業場の割合は90.8%に上がることが分かった。また、時間外・休日労働に関する労使協定を締結している事業場は27.9%となっているほか、法定時間外・休日労働に対する増賃金率について、時間外労働は法定どおり「25%」とする事業場は89.9%、休日労働も法定どおり「35%」とする事業場は86.0%などとなっている。
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(2001) "平成12年度労働時間等総合実態調査: 事業場平均の週所定労働時間は38時間38分 (厚生労働省調べ)" (データファイル). 先見労務管理. 1173: 26-35. (p. 27)

http://id.tsigeto.info/naid/40002207263

文章は『労務事情』記事とほぼおなじである。ただし各項目の最初に注目点が太字で書いてあったり、注釈事項を枠で囲って本文と区別するなど、レイアウト上の工夫がある。載っている表はかなりちがう。

『労働基準広報』誌は、1347号 (2000年11月21日)、1348号 (2000年12月1日)、1352号 (2001年1月21日)の3回にわたって、2000年度調査をとりあげている。内容は時間外労働・休日労働に関する労使協定と割増賃金率である。時間外労働の実態に関する項目は言及されていない。

 「平成12年度労働時間等総合実態調査結果」は、週所定労働時間や時間外・休日労働及び深夜業の割増率の状況などを把握することを目的に実施されたもの。このほか、三六協定の締結状況・内容も細かく調査されている。本誌では、調査の中から、三六協定のうち時間外労働に関する締結内容、休日労働に関する締結内容、各割増率を順にとりあげていく。今号は、通常の労働者を対象とした時間外労働に関する締結内容を紹介する。
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(2000) "6割が1年の限度時間を360時間で協定" (労務資料 平成12年度労働時間等総合実態調査結果(1): 三六協定上の時間外労働の上限 (労働省調べ)). 労働基準広報. 1347: 18-21. (p. 18)

http://id.tsigeto.info/naid/40003869066

「平成12年度労働時間等総合実態調査結果」の中から、今回は1年単位の変形労働時間制における時間外労働協定の締結内容と、休日労働協定に関する締結内容をみる。三六協定における1ヵ月 (4週間) の法定休日労働の限度日数をみると、「2日」で協定している企業が最も多く、41.4%となっている。また、平均締結日数は1.8日となっていることがわかった。
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(2000) "4割の企業が法定休日労働を月2日で協定" (労務資料 平成12年度労働時間等総合実態調査結果(2): 三六協定上の法定休日労働の限度日数等 (労働省調べ)). 労働基準広報. 1348: 20-22. (p. 20)

http://id.tsigeto.info/naid/40003869068

 これまで2回にわたり紹介してきた「平成12年度労働時間等総合実態調査結果」の中から、最後に、時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金率をみてみる。割増賃金率については、法定の割増賃金率を採用している企業割合が圧倒的に多く、時間外労働では89.9%、休日労働では86.0%、深夜労働では87.5%を占めていることが分かった。
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(2001) "ほぼ9割の企業が法定の割増賃金率を採用" (労務資料 平成12年度労働時間等総合実態調査結果(3): 時間外・休日労働、深夜労働の割増賃金率 (労働省調べ)). 労働基準広報 1352: 19-21. (p. 19)

http://id.tsigeto.info/naid/40003869080

厚生労働省作成のパンフレット 『所定外労働の削減に向けて:「所定外労働削減要綱」概要』 (日付記載がないがおそらく2001年) 中で、「所定休日労働の実績 (月間)」のグラフのデータ源が「労働省「平成12年度労働時間等総合実態調査」」となっている。


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厚生労働省『所定外労働の削減に向けて:「所定外労働削減要綱」概要』(p. 3)

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/dl/040324-8a.pdf