remcat: 研究資料集

(TANAKA Sigeto)

2005年度労働時間等総合実態調査

2006年3月15日の 第52回労働政策審議会労働条件分科会 資料に「平成17年度労働時間等総合実態調査結果」がふくまれている (資料 No. 2)。

 本調査は、時間外労働及び休日労働の実態、割増賃金率の状況、裁量労働制の実態等を把握することを目的として、実施したものである。
 調査及び調査結果の概要は以下のとおりである。

I  調査の概要

 1  調査対象
 調査対象は、労働基準法別表第1第1号から第5号まで、第8号から第15号まで及びその他の事業に該当する主として民営事業場のうちから、業種・規模・地域別事業場数を勘案して対象事業場数(11,670事業場)を決定し、具体的な事業場はこれをもとに各都道府県労働局において無作為に選定した。ただし、裁量労働制に係る事業場数を一定数確保するため、専門業務型裁量労働制導入事業場及び企画業務型裁量労働制導入事業場を優先的に選定した。

 2  調査方法
 調査は、平成17年4月から7月に全国の労働基準監督署の労働基準監督官が事業場を訪問する方法により実施し、原則として平成17年4月1日時点の実態を調査している。
 なお、調査結果は母集団に復元したものを表章している。ただし、表47以降の裁量労働制に係る調査については実数に基づく調査結果である。
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厚生労働省 労働基準局 監督課 (2006) "平成17年度労働時間等総合実態調査結果" (第52回労働政策審議会労働条件分科会 資料 No. 2) (2006年3月15日)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/03/s0315-5c1.html

「法定時間外労働の実績」に関する説明はつぎのとおり:

5  時間外・休日労働の実績
※  「最長の者」とは、調査対象月における月間の時間外労働が最長の者のことをいい、「平均的な者」とは、調査対象月において最も多くの労働者が属すると思われる時間外労働時間数の層に含まれる労働者のことをいう。
1)  一般労働者に関する法定時間外労働の実績
※  この項の「一般労働者」とは1年単位の変形労働時間制の対象労働者及び限度基準適用除外業務等に従事する労働者以外の労働者のことである。
(1)  1週の法定時間外労働の実績(最長の者及び平均的な者)(表27、28)
 最長の者において、時間外労働時間が限度基準で定める「15時間」以下である事業場割合は85.9%(平成14年度85.9%)となっている。平均的な者においては、96.4%(同95.0%)となっている。
(2)  1箇月の法定時間外労働の実績(最長の者及び平均的な者)(表29、30)
 最長の者において、時間外労働時間が限度基準で定める「45時間」以下である事業場割合は85.2%(平成14年度85.3%)となっている。平均的な者においては、95.8%(同95.3%)となっている。
(3)  1年の法定時間外労働の実績(最長の者及び平均的な者)(表31、32)
 最長の者において、時間外労働時間が限度基準で定める「360時間」以下である事業場割合は82.6%(平成14年度84.0%)となっている。平均的な者においては、92.7%(同93.0%)となっている。
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厚生労働省 労働基準局 監督課 (2006) "平成17年度労働時間等総合実態調査結果" (第52回労働政策審議会労働条件分科会 資料 No. 2) (2006年3月15日)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/03/s0315-5c1.html

裁量労働制にかかわる調査結果の説明はつぎのとおり:

7  裁量労働制
〔……〕
3)  労働時間の状況
※  この項で「労働時間の状況として把握した時間」とは、労働基準法第38条の3第1項第4号又は第38条の4第1項第4号に規定する労働時間の状況として把握した時間をいう。
(1)  専門業務型裁量労働制(最長の者及び平均的な者)(表51、52)
 労働時間の状況として把握した時間の1日の平均時間は最長の者において、12時間38分となっており、平均的な者においては、9時間19分となっている。
(2)  企画業務型裁量労働制(最長の者及び平均的な者)(表53、54)
 労働時間の状況として把握した時間の1日の平均時間は最長の者において、12時間16分となっており、平均的な者においては、9時間24分となっている。
4)  年間の法定休日労働の実績
※  この項で「最多の者」とは、法定休日労働日数の合計が最多の者をいい、「平均的な者」とは、法定休日労働日数の合計が平均的な者をいう。
(1)  専門業務型裁量労働制(最多の者及び平均的な者)(表55、56)
 最多の者において「法定休日労働あり」の割合が33.7%、「法定休日労働なし」の割合が66.3%となっている。
 平均的な者においては「法定休日労働あり」の割合が17.8%、「法定休日労働なし」の割合が82.2%となっている。
 法定休日労働の日数を事業場数の割合でみると、「年2日」が最多の者において14.5%、「年1日」が平均的な者において35.2%と最も多くなっている。
(2)  企画業務型裁量労働制(最多の者及び平均的な者)(表57、58)
 最多の者において「法定休日労働あり」の割合が25.5%、「法定休日労働なし」の割合が74.5%となっている。
 平均的な者においては「法定休日労働あり」の割合が11.3%、「法定休日労働なし」の割合が88.7%となっている。
 法定休日労働の日数を事業場数の割合でみると、「年1日」、「年2日」が最多の者においてそれぞれ21.9%、「年1日」が平均的な者において37.7%と最も多くなっている。
5)  年間実労働日数の実績
(1)  専門業務型裁量労働制(最多の者及び平均的な者)(表59、60)
 年間実労働日数の平均日数は最多の者において254.2日、平均的な者においては240.7日となっている。
(2)  企画業務型裁量労働制(最多の者及び平均的な者)(表61、62)
 年間実労働日数の平均日数は最多の者において243.9日、平均的な者においては234.0日となっている。
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厚生労働省 労働基準局 監督課 (2006) "平成17年度労働時間等総合実態調査結果" (第52回労働政策審議会労働条件分科会 資料 No. 2) (2006年3月15日)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/03/s0315-5c1.html

この会議の際の議事録では、2005年度調査についてつぎのような説明がなされている:

○大西監督課長 議論に必要な資料につきましては当然、私どもで、できる限りというか、用意させていただきたいと思います。
 いま、アンケート調査が主体であったというような御指摘がありました。これは私の説明がちょっと具合悪かったのかなと思いますが、資料No.2「労働時間等総合実態調査結果」はアンケートではなくて監督署でやった調査で、私どもが見にいってきた結果です。それをグラフ化して16、17、18頁で「平均的な者」ということで取ってあるわけです。そこのグラフを詳細には御説明しませんでしたが、それぞれのデータはあるということを一つ御理解いただきたいことと、資料の説明は、ちょっと省略させていただいた部分もありますが、一応、監督署における指導事例等も、必要に応じて紹介させていただいております。今後ともそういったことでいろいろなデータを提供していきたいと考えております。
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"06/03/15 労働政策審議会労働条件分科会 第52回議事録" (2006年3月15日)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/03/txt/s0315-3.txt

2005年度調査の情報は『労働法令通信』2074号 (2006年4月8日)、『賃金事情』(2006年9月5日)、『労政時報』3688号 (2006年10月27日) に出ている。

 厚生労働省がこのほどまとめた2005年度の労働時間等総合実態調査結果によると、裁量労働制適用労働者数は企画業務型では1事業場あたり平均27.8人、専門業務型では1事業場あたり平均49.1人となっている。次に、企画業務型労働制適用労働者の労働時間の状況をみると、1日の平均時間は最長の者は12時間16分、平均的な者は9時間24分、専門業務型では、1日の平均時間は最長の者は12時間38分、平均的な者は9時間19分となっている。調査は、11,670事業場の原則として2005年4月1日時点の実態を、同年4月から7月に全国の労働基準監督署の労働基準監督官が事業場を訪問する方法により行われた。
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(2006) "裁量労働制適用労働者数 企画業務型は1事業場あたり平均27.8人: 専門業務型裁量労働制は49.1人/厚生労働省「労働時間等総合実態調査」". 労働法令通信 2074: 28-32. (p. 28)

http://id.tsigeto.info/naid/40007191884

 厚生労働省は,3月15日の労働政策審議会労働条件部会に検討用資料として本調査結果を配布・公表した。本調査は行政の政策立案・推進のためのデータとして利用することを目的としているため,かなり詳細なものとなっている。以下に,調査結果の主だった部分を紹介する。
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(2006) "2005年度 労働時間等総合実態調査: 一般労働者の法定時間外労働 月平均15時間 最長の者で25.5時間/裁量労働制適用者の1日の労働時間は専門業務型で9時間19分 最長の者で12時間38分". 賃金事情 2504: 41-49. (p. 41)

http://id.tsigeto.info/naid/40007387034

この『賃金事情』記事はタイトル部分に「一般労働者の法定時間外労働」の月平均と「裁量労働制適用者の1日の労働時間」(専門業務型) をならべて標記しており、これらの数値の対比が印象付けられる紙面になっている。


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(2006) "2005年度 労働時間等総合実態調査: 一般労働者の法定時間外労働 月平均15時間 最長の者で25.5時間/裁量労働制適用者の1日の労働時間は専門業務型で9時間19分 最長の者で12時間38分". 賃金事情 2504: 41-49. (p. 41 タイトル部分)

http://id.tsigeto.info/naid/40007387034

『労政時報』記事では、対象事業場のサンプリングに関して、他の資料にはない記述がある:

1. 調査対象:業種・規模・地域別事業場数を勘案して対象事業場数(1万1670事業場)を決定。ただし裁量労働制に係る事業場数を一定数確保するため、専門業務型裁量労働制導入事業場および企画業務型裁量労働制導入事業場を優先的に選定した。
2. 調査方法:2005年4月から7月に全国の労働基準監督署の労働基準監督官が事業場を訪問する方法により実施し、原則として2005年4月1日時点の実態を調査。
3. 利用上の注意:本調査では、調査対象事業場の規模別(1〜9人/10〜30人/31〜100人/101〜300人/301人以上)構成割合がおおむね同じになるように選定されている。このため、平均値算定等では、相対的に中小規模企業のウエートが高くなっている点に留意していただきたい。
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(2006) "2005年度労働時間等総合実態調査: 特別条項付き労使協定を締結している事業場は27.7%" (主要調査にみる労働時間管理の現状). 労政時報 3688: 99-107. (p. 99)

http://id.tsigeto.info/naid/40007458453

「中小規模企業のウエートが高くなっている点に留意していただきたい」という注釈は不可解である。この調査の結果はウェイト付けして母集団を復元した形で数値を出しているので、「留意」して読む必要はなく、そのまま母集団の値を推定しているものと考えてよいはず (裁量労働制に関する結果をのぞく)。